自らが設定した課題に取り組む前川右京と井上広大に今岡コーチが助言を送る指導の形は良い

 高知県安芸での秋季キャンプで今岡打撃コーチが前川と井上に打撃指導を行なったと日刊スポーツが報じています。

 ここでのポイントは今岡コーチが「選手と会話した中で何を思って取り組んでいるかに沿っていく」と『選手自身が希望する方向性で成長するためのサポート役に徹する方針』を示したことでしょう。

 大砲候補として期待される両選手は抱えている課題が異なるため、個々の選手が納得して研鑽に励む環境を構築した方が的確と考えられるからです。

 

前川の課題は「長打力」

 今年1軍デビューを果たした前川右京の課題は「長打力」です。

打率 三振率 四球率 IsoP
ミエセス '23 .318 15.7% 13.7% 0.182
前川 '22 .250 12.5% 3.1% 0.200
'23 .320 14.5% 8% 0.064

 2軍で打率 .320 を残した前川ですが、『長打率と打率の差で示される IsoP』は 0.064。打率がほぼ同じだったミエセス(IsoP : .182)に大きく水をあけられています。

 つまり、前川は「 “当てに行くバッティング” で率を稼いでいた」と言えるでしょう。このスタイルでは1軍の壁に跳ね返されるのは当然です。

 初めて今岡塾に参加した前川も下半身の力で打球を強くする方法を聞いた。

 ただ、秋季キャンプで「打球を強くするための下半身の使い方」を今岡コーチに質問しているので目指す方向は正しいはずです。

 『強い打球を飛ばすための打撃フォーム』を確立・習得できれば、1軍での出場機会は必然的に増えると思います。

 

井上の課題は「三振率の高さ」

 右の長距離砲として期待されている井上広大は「三振率の高さ」が課題です。

打率 三振率 四球率 IsoP
ミエセス '23 .318 15.7% 13.7% 0.182
井上 '22 .222 32.1% 5.1% 0.132
'23 .234 28.7% 7.2% 0.170

 2軍で三振率が 30% は高すぎます。ミエセスと遜色ない長打力(= IsoP の数値)を維持しつつ、三振率を 15% 前後にまで引き下げることが来季のテーマになるでしょう。

 三振率が突出して高い理由としては「 “スイングすべき球” を絞り込めていないこと」も考えられます。

 今岡コーチは「相手投手の『勝負球』は見逃しても良い」との考えの持ち主です。「来たボールを振ってタイミングを合わせる以外のアプローチ」を習得する方向でも間違いではないはずです。

 ノーステップに関してはメジャーリーグでは『足を上げないスイング』が主流なのです。

 下半身や手首の使い方次第で飛距離はカバーできるため、井上自身がタイミングの取り方で苦戦しない限りは問題にはならないと思います。