“投手優位が進んだ2023年シーズン” に打撃成績を前年度よりも向上させた阪神打線

 2023年のプロ野球は「投高打低の進行が見られたシーズン」でした。

 セ・リーグではシーズンの平均得点が503得点と昨年・2022年の520得点から減少。打率も 0.244 と昨年の 0.248 から数字を下げています。

 一方で阪神タイガースはシーズン489得点だったのが555得点にまで増加。「打撃陣が結果を残したこと」は岡田監督の実績として評価されるべきでしょう。

 

投手優位の傾向が強まったことで打撃成績に苦しむ様子が鮮明に

 主な打撃項目は2022年シーズンと2023年シーズンで下表のように変化しました。

表: 主要打撃項目のシーズン成績
阪神 リーグ平均
'23年 '22年 '23年 '22年
得点 555 489 503 520
打率 0.247 0.243 0.244 0.248
塁打 1679 1606 1727 1775
四死球 551 405 434 422
三振 1173 1020 1048 1011
盗塁 79 110 56 64
犠打 106 101 119 104
出塁率 0.322 0.301 0.306 0.308

 阪神は “投手有利の甲子園” を本拠地にしているため、打撃成績は「リーグ平均を下回る数値」であることが一般的です。2023年も『(長打を換算する)塁打数』はリーグ平均を下回る1679でした。

 ただ、阪神は『塁打数』を2022年シーズンよりも増加させていることに対し、リーグ平均の『塁打数』は低下しています。また、『得点数』や『打率』もリーグ平均は低下しました。

 その中で阪神はそれらの項目を良化させているのですから、打線が相対的に向上した実績は適切に評価されるべきでしょう。

 

「昨季よりも1試合あたり1四球多く獲得できたこと」は効いている

 2023年の阪神打線が他球団との差別化に成功したのは『出塁率』でしょう。2022年よりも「1試合あたり四球を1つ多く獲得」したことで出塁率が 0.322 に達したからです。

 2022年のヤクルトがチーム出塁率 0.318 でしたから、2023年の阪神打線が “厄介な打線” であったことは間違いありません。

 阪神打線は依然として “リーグ平均を下回る長打力” に留まっていますが、その分は『四球で出塁した中軸打者の走者としての価値』でカバーしました。

 森下・大山・佐藤輝で構成されるクリーンナップは「四球で出塁した後に後続打者のシングルヒットで3塁を狙える走力のある選手」です。

 シングルヒット1本で無死1・3塁または1死・3塁の局面を作れると得点の期待値は大きく高まります。

 ただ、四球で出塁できないとなると “パワー特化型の長距離砲” が不在である阪神は得点力の低下に見舞われるリスクを抱えています。この部分への対処が来年・2024年への課題になるものと思います。