クライマックスシリーズで阪神と広島の差となったのは「1軍野手陣の『層の厚さ』と『経験値』」

 2023年のセ・リーグのクライマックスシリーズ・ファイナルステージはレギュラーシーズンを首位で終えた阪神が3連勝で地力を見せつけ、日本シリーズに駒を進めました。

 涙を吞む結果となった広島と順当に勝ち上がった阪神との差は「1軍野手陣の『層の厚さ』と『経験値』」でしょう。

 これらの部分は翌年以降に上乗せが可能であり、“正攻法を採った挑戦者” が手にした果実になる可能性があります。

 

“巧打者だけ” になっていた広島打線

 阪神はチーム打率が .247 で広島は .246。チーム本塁打は阪神の84本に対し、広島は96本とチームの打力に大きな差はありませんでした。

 ただ、長打力による貢献が期待されていたデビッドソンとマクブルームの両助っ人選手がクライマックスシリーズは不在。『強打者』が抜けた関係で1軍には『巧打者』だけが残る編成となりました。

 しかも、巧打者で経験のある菊池・西川・秋山がレギュラーシーズンの最終盤にコンディション不良で離脱。

 ポストシーズンに合わせたものの、思い切って引っ張った打球が外野の頭を越すような鋭いスイングは影を潜めていました。これらの戦力ダウンは広島にとって厳しい状況だったと言わざるを得ないでしょう。

 

韮澤や末包の拙守で阪神に流れを渡してしまう悪循環

 また、『強打者』が不在になったことが「韮澤や末包の拙守」を招く要因になったことも否めません。

 レギュラーシーズンを2位で終えた広島はレギュレーションで「最低でも2勝が必要」でした。無得点では勝てないため、“阪神の先発投手との相性が良い選手” や “状態の良い選手” を抜擢する采配は間違いではありません。

 ところが、1軍での出場経験の少なさが拙守の原因になってしまいました。

 経験の少なさによる拙守はどの選手もプロで経験するものですが、それが「レギュラーシーズン(のできれば前半戦)」ではなく「ポストシーズン」で起きてしまったことが悔やまれる結果になったと言えるでしょう。

 阪神は「わずか1勝の差でリーグ優勝を逸した2021年の経験」を主力野手陣のほとんどが有していたため、これが経験値の差として現れたものと考えられます。

 

 阪神は近本、中野、佐藤輝、木浪が実質的なキャリアハイ。大山と坂本はキャリア2番目の好成績と「主力野手陣のシーズン成績は上振れ」と言える状態でした。

 主力野手陣全員が「成績を高止まり」させるのは不可能でしょう。したがって、来季の阪神は「状態の上がらない主力野手陣をどこまで我慢して起用するか」が鍵になると思います。