及川を「菊池雄星のようなエース」に育てたいのか「松井裕樹のようなクローザー」に育てたいのかが見えて来ない

 阪神の及川が7月26日の公示で1軍登録を抹消されました。

 交流戦の終盤で投球フォームが崩れて打ち込まれて抹消となり、“復調していない状態” で7月5日に緊急再昇格をさせていたのですから今回の抹消は止むを得ません。

 しかし、今回の抹消を招いた原因は首脳陣です。“ファームで先発調整をして結果を残していた高卒4年目の投手” が「1軍では中継ぎに配置されて登板準備過多で投球フォームを崩した」のです。

 球団として及川を「本格派の先発左腕」にしたいのか「クローザー」にしたいのかを明確にした育成プロセスを採るべきでしょう。

 

高卒4年目の有望投手で “配置ガチャ” をするな

 投手がシーズン中に『先発転向』や『中継ぎ転向』をすることは起こり得ることです。ただ、どの投手を転向させても良いという訳ではありません。

 配置転換すべきでない最たるケースは「ファームで先発または中継ぎとして結果を残している若手投手(= 25歳未満)を1軍で起用するためにシーズン中に中継ぎまたは先発に転向させること」でしょう。

 理由は「当該投手の中で調整方法が確立されてから」です。

 ぶっつけ本番での配置転換は “配置ガチャ” です。ある程度の経験を有する中堅投手なら「シーズン中の配置転換」は理解できますが、1軍経験の少ない若手投手の場合は期待した結果にはならないと思われます。

 

中継ぎ投手を「登板準備過多」で酷使する岡田監督の下でなら尚更

 特に、今の阪神は「先発として調整していた若手投手の中継ぎへの配置転換」は “ごく一部” の例外を除いて失敗に終わるでしょう。調整方法と起用方法が全く違うからです。

  • 先発投手
    • 週1度の登板が基本
    • 登板日は事前に分かる
  • ブルペン陣
    • 登板するかは試合展開次第
    • 岡田監督は「火消し役」に任命した投手に毎試合で肩を作らせる

 湯浅の離脱で “2023年シーズンに先発としてファームでローテーションを担っていた及川” に『1軍の中継ぎ投手』として白羽の矢が立ちました。

 当初は1軍で圧倒的な投球内容を見せていた及川はブルペンでの登板準備過多で疲弊。6月中旬の交流戦では本来の投球が全くと言って良いほどできていませんでした。

 及川の好パフォーマンスを潰すことになった要因は「岡田監督の起用方法にある」と言わざるを得ないでしょう。

 

及川を「先発」と「抑え」のどちらに育てたいのか

 また、阪神は球団として「及川を先発と抑えのどちらで1流投手に育てたいのか」を決めなければなりません。現状は「どちらで育てたいのか分からない中途半端な状態」だからです。

  • 先発として育成するなら
    • ファームで先発ローテーションを担わせる
    • 1軍の先発投手が調子を落とした際の代役
    • 1軍の中継ぎで「第2先発」としてスタンバイ
  • 守護神として育成するなら
    • 1軍の中継ぎ陣の1人として起用
    • 助っ人外国人と同様の登板間隔を確保

 「先発として良いボールを投げているのでとりあえず中継ぎとして1軍に昇格」という “今後のことを考慮していない起用方法” では育つはずだった投手が伸び悩むことになります。

 及川自身が将来像を『先発』と『抑え』のどちらで描いているのかを確認した上で、球団として成長をサポートする育成方法を採ることが望ましいのではないでしょうか。