藤浪が好投する要因は「6月頃の投球フォーム改良が馴染んでストレートのシュート成分がスプリットに近づいたこと」

 アスレチックスに加入した藤浪が6月から好投を続けていることに対する様々な記事が出ています。

 投球内容が激変した理由は藤浪自身が公言しない限り推測の域を出ませんが、「藤浪の4シーム(の球質)が変化していること」が好投の要因でしょう。

 球質の変化はデータで示されているからです。

 

藤浪の4シーム

 MLB では公式サイトで投球データが公表されています。藤浪が中継ぎに転向した後の5月28日に行われたアストロズ戦でのレポートが以下です。

 4シームの横成分は『基準点から -14inches (-35.6cm)』ほどでした。

 6月11日のブリュワーズ戦での投球レポートは以下のものです。

 4シームの横成分は『基準点から -12inches (-30.5cm) 前後』に “緩和” されていることが見て取れます。

 最後にオースルター前の7月9日に行われたレッドソックス戦での投球レポートです。

 4シームの横成分は『基準点から -10inches (-25.4cm) 前後』と示されています。球速 100mph 超が連発される方に目が奪われがちですが、4シームの横成分が減った方が好投の要因と思われます。

 

『4シームの横成分』は減ったが、『4シームの縦成分』や『スプリットの横成分』は変わっていない

 藤浪が2023年の6月から急に打たれなくなったのは「投球フォームの改良が馴染んで4シームとスプリットの判断が付きにくくなったからでしょう。

 4シームの横成分が『基準点から -30.5cm 〜 -15.3cm の範囲内』にまで “緩和” した一方、その間もスプリットの横成分は『基準点から -30.5cm 〜 -15.3cm の範囲内』のままでした。

 4シームとスプリットのシュート成分が似通ってくると「シュート成分が強い速球系だと4シーム」との判別方法の有効性が薄れます。

 “この結果を得るための取り組み” が結実したことは確かでしょう。球質は根性論では変化しないからです。

 

“回転効率の悪い4シーム” が思わぬ強みとなる

 藤浪が投じるストレートは「回転効率の悪さ」が問題視されていましたが、4シームとスプリットが横の変化量で見分けが付かない場合は “迷彩” として機能します。

  • スプリット:投手が意図的にボールの回転効率を落として縦方向の変化を生み出す球種
  • 藤浪の4シーム:回転効率が悪いため平均値よりも縦方向に沈みがち

 ストレートとスプリットの一般的な見分け方は「縦方向に沈むかどうか」です。ところが、回転効率の悪いストレートも “平均値よりは” 沈むのです。

 『スプリットと誤認させる4シーム』は特殊球として機能しますし、この強みを活かした投球を継続できるかが活躍のバロメーターになると思われます。

 ストレートだけの偏り過ぎた配球だと狙い撃ちにされてしまうため、スプリットを上手く織り交ぜられるかがポイントになるでしょう。