矢野監督の投手評価基準と運用方針

 矢野監督が DAZN などで解説をした際に言及していた内容から投手の起用方法についての推察。

  • 先発ローテーションを守り続けるには、
    1. “使える変化球” が3つは欲しい
    2. 『ニコイチ(※ 2球種に絞られる)』になるのはダメ
    3. (打者の目先を変える)カーブが使えると望ましい
  • 『先発』ができるのなら『中継ぎ』はできる
    • ブルペン8人制&50試合登板を目標に運用
    • リフレッシュ目的での抹消を積極活用

 2022年シーズンに阪神が許した “失点数” は428。一部の評論家やマスコミは「エラー絡みの失点が多い」と批判していましたが、1試合平均で 2.99 失点でした。

 岡田監督の下で【1試合あたりの平均失点数】がどう変化するかが注目点になるでしょう。

 

先発投手の評価基準は「先発ローテーションを守り続ける力があるか」

 矢野監督が上述の評価項目を採っていた理由は『状態が優れない先発登板日でも試合を作ってくれる先発投手(やバッテリー)』を重用していたからでしょう。

  • 先発投手が悪いなりにも6回を投げ切ってくれると、
    1. ブルペン陣の起用が2〜3人で済む
    2. 負担軽減となり、状態の良いブルペン陣を投入できる
  • 先発投手が早いイニングで KO されると、
    1. 勝ちパターン以外の中継ぎ陣に負担がかかる
    2. “勝ちパターンに匹敵の力を持つ中継ぎ” が疲弊して接戦で使える投手が限定される

 そのため、“制球難でストライクを取れる球種が制限されがちな藤浪” や “特定の球種ばかりを要求して投球の幅を狭めるリードをする梅野” は矢野監督の下ではあまり評価されなかったのです。

 

藤川球児が酷評した佐藤蓮や鈴木勇斗が上位指名された理由

 阪神 OB の藤川球児氏が「ストライクの入らない投手」と酷評した佐藤蓮や鈴木勇斗が上位指名された理由は「両投手ともに『独特の軌道を描くカーブ』を持ち球にする本格派投手」だからです。

 カーブが『特殊球』と判断されれば、評価が高くなるのは必然でしょう。

 フライボール革命への対抗策として「4シーム」や「(打者の目先を変えるだけでなく4シームと『対』になる)カーブ」が復権していることも追い風になっているからです。

 藤川氏は「 “まとまっている投手” を指名して筋力トレーニングで球速アップを図る育成方針」を支持しているものと思われます。

 ただ、1軍で通用するストレートの平均球速にまで上がる保証はありませんし、プロ入り後や球速アップ後に制球難で苦労するケースは起こり得ることです。

 その際は「制球力を改善するための手助け」が監督・コーチ陣に要求されるため、“制球力不足が課題と指摘されている本格派投手” の指名を回避すれば済むことはではないはずです。

 

先発調整をしていた投手の中継ぎ起用は『運用面』が大きい

 矢野監督時代は「先発ができれば “中” はいつでもできる」との発言がコーチ陣などから出ていましたが、これは『金村コーチの投手運用能力』に大きく依存していました。

  • イニングの頭から登板が基本
  • イニング途中でのリリーフは加治屋や渡邉雄大など対右や対左が極端に強い投手が担当
  • リフレッシュ目的での登録抹消を積極的に活用

 “先発調整をしていた投手” は「リフレッシュ目的で中継ぎの枠が空いた際のスポット起用」が基本で『勝ちパターン』や『イニング途中での登板』という難しい局面での起用はありませんでした。

 首脳陣の狙いは先発投手に「長いイニングを投げる」だけではなく「ブルペン陣が準備をしなくて良いぐらいの投球内容で長いイニングを投げる」という “1段上の意識” を掲げて欲しかったからだと思います。

 

 2022年シーズンに495失点を許した中日は【1試合あたりの平均失点数】で 3.46 点でした。2023年シーズンの阪神は「シーズン500失点未満」が目標になるでしょう。

 シーズン終盤の山場を投手陣が疲弊した状態で迎えることは避けたいですし、岡田監督が『投手陣の疲労を分散させる起用方法』で結果を残すことができるのかが注目点になると思われます。