梅野が求め続けた【外の出し入れを中心にしたリード】を断念して試合中に立ち直った青柳

 5月2日の阪神対中日戦(4回戦)に中10日で先発した青柳は初回に3失点を喫するも2回以降は立ち直り、6回103球で3失点と QS を記録しました。

 2回以降は前回登板時(や5月2日の試合の初回)とは配球がガラリと変わっています。これが復調の要因でしょう。

 【組んだ捕手】ではなく【捕手の求めたリード】が青柳の特長を消していたことが問題だったと思います。

 

2回以降に見ることができた明らかな変更点

 5月2日に行われた中日戦(4回戦)の2回以降から変わったのは「左打者との対戦時に『インコース寄りの速球系のボール』を “捕手が” 要求し始めた」ことです。

 この配球により、青柳の投球の幅は以下のように広がりました。

  1. インコース寄りの速球
    • 差し込まれると内野ゴロになる可能性大
  2. ツーシームとチェンジアップによる『外の出し入れ』
    • インコース寄りの速球への意識があるほど遠くに感じる
  3. スライダーを外から入れる『バックドア』
    • 目先を変える意味で効果的
  4. インコースとカットボール
    • インコース寄りの速球と『対』になる

 梅野が求めた【従来の配球(=アウトコースの出し入れにすがる投球】は左打者が思い切って踏み込める内容でした。

 しかし、『インコース寄りの速球』が加わることで左打者が簡単には踏み込めなくなり、外角のボールがより遠くに感じることで投手が優位になるのです。

 このボールを要求できなかった(or しなかった)ことがすべてでしょう。

 

試合中に梅野の組み立てが突然変わったことが興味深い

 興味深いのは「 “ツーシーム系の速球を『左打者のアウトコース』に要求し続けていた梅野” が『左打者のインコース寄り』に要求し始めた理由」です。

 前回登板での反省を活かしているなら、初回から『左打者のインコース寄りの速球』を使っているはずです。

 また、ベンチからの指示とすれば(安藤コーチがマウンドに行った)初回の途中から投じているでしょう。

 梅野の組み立てが変わったのは「2回表から」ですから、1回表の攻撃が終了した後にベンチで “誰が” が「配球への強烈な不満」を告げたと思われます。

 “監督から正捕手に指名されたマスコミ受けの良い最年長野手” が【坂本誠志郎型の組み立て】に寄せたのです。これが可能な立場の人物はおのずと限られるでしょう。

 

“プレートの1塁側を踏むサイドスローの青柳” には『左打者のインコース寄りの速球』が必要不可欠

 左打者は青柳に『インコース寄りの速球』を投げ込まれると「投球の幅を広げられる」という点で厄介なのですが、青柳には投球メカニズム的な利点があります。

 青柳は “プレートの1塁側を踏むサイドスロー” で「身体の開きやリリースポイントが早くなってしまうと左打者のアウトコースを狙ったボールがより外に流れる」という問題を抱えています。

 身体の開きやリリースポイントが早い状態で左打者に『インコース寄りの速球』を投じると「ボールは真ん中から外寄りに流れる」ことになります。

 並みの投手だとリスキーですが、青柳の場合は【球が強くて動く】ため致命傷になるケースは限定的です。しかも、青柳自身が「どれだけ身体の開きやリリースポイントが理想から外れているか」を認識できるオマケ付きです。

 マウンド上での修正能力が備わっていなければ2年連続最多勝は取れませんし、青柳の【強み】と【実績】を活かさない配球やリードは愚策と言わざるを得ません。

 

 梅野が青柳と組んだ際に【左打者のアウトコースの出し入れ一辺倒】ではなく、【インコース寄りの速球】を駆使して大胆に攻めたり、【バックドアのスライダー】を織り交ぜて打者の目先を変える組み立てができるのならコンビを継続しても良いでしょう。

 逆に『青柳の特長を活かす配球やリード』ができないなら、坂本誠志郎と青柳のバッテリーに変更しなければなりません。梅野の打撃面での貢献度を考えると尚更です。

 問題が「捕手個人」ではなく「捕手が要求した配球」にあることが2日の中日戦で “リードを変更して結果を残した梅野” が実証したのですから。