「守備力が上がれば打力も上がる」との『昭和の価値観』で佐藤輝明を咎めて盛り上がる岡田彰布と吉田義男

 日刊スポーツに掲載された岡田彰布監督と吉田義男氏の新春対談で両者が「佐藤輝明は守備の練習不足だから打力が物足りない」との意見で一致し、盛り上がりを見せています。

 両者の主張は『昭和の野球』です。現代では通用しないでしょう。“その価値観に基づく指導方法が色濃かった阪神タイガース” では長距離砲が育たなかったからです。

 

再就任直後から佐藤輝明に「スタンス幅を広げて重心を下げろ」と注文を付けている岡田監督

 岡田監督は再就任した直後・2022年の秋季キャンプから「スタンス幅が狭い」などと佐藤輝明の打撃フォームを全否定して打撃フォーム改造を強く求めています。

 “岡田監督の意向に沿った打撃フォームへの改造を行った佐藤輝明” は「2023年シーズンの序盤戦は絶不調」という憂き目に遭いましたが、岡田監督と吉田義男氏は2024年の新春対談で「重心を下げる守備練習に精を出せ」と再び注文を付けています。

ノックの重要性って、ノックで下半身をもっとなあ、もっと重心下がると思うしね
(中略)
守備がうまなるだけじゃないということをな、それでバッティングにもプラスなるいうことを、そこを根本的に考えなあかんわな

 ちなみに、佐藤輝明が2023年シーズン後半戦でリーグ最高の打率と OPS を記録した際のバッティングフォームは『狭いスタンス幅』でした。

 監督やコーチが「重心を低くしろ」と言うだけでは “現代の選手” は聞く耳を持たないでしょう。

 なぜなら、データ解析が進んだ現代では「今より重心をどれだけ下げるとどういう変化が起きる」と具体的な数値で示せるからです。

 

現代では “メジャーの一流打者” のデータを参考に『自分に適したバッティングフォーム』を科学的に模索できる

 「モーションキャプチャーを用いた動作解析で選手としての長所と短所を可視化」する施設の代表例がドライブラインでしょう。

 ドライブラインなどはメジャーの一流選手も利用していますし、そこで蓄積されたデータから「現時点でのレベル」が “数値で” 示されます。

 しかも、それらの情報を基に「(今の自分が不得意な部分を克服して)上のレベルに到達するためのトレーニングメニューを提言」してくれるのです。

 「自分に適したバッティングフォームで重心を低くするのは逆効果」とのデータ分析によるフィードバックを得ている選手もいる訳ですし、そうした立場の選手に対して監督やコーチが「重心を低くする練習に励め」との “アナログな” 指導をしても聞き流されるでしょう。

 重心の低い打撃フォームの選手だけが結果的にプロとして生き残った昭和とは取り巻く環境が違うからです。