2025年の日本シリーズは “打線が機能したソフトバンク” が4勝1敗で栄冠に輝きました。明暗を分けたのは『球団の打撃方針と保有設備』でしょう。
ホークスは首脳陣が「阪神投手陣の『速くて強いストレート』を打ち返せ」と発破をかけることが可能でしたし、昨年の日本シリーズで敗退していたことで割り切りやすいチーム事情もプラスに働きました。
阪神は「 “ホークスが採ったアプローチ” を追従する」と「 “ホークスが採ったアプローチと同じ効果を期待できる異なるアプローチ” を模索する」のどちらを選択しなければならないはずです。
ホークスの打撃方針と保有設備
まず、ホークスの打撃は以下の価値観に基づく方針であると小久保監督や打撃コーチが2024年シーズンに明言しています。
最初からフォアボールを狙えとは言っていません。追い込まれるまでは好球必打。ストレートは一発で仕留める。
ただし、(練習から)当てに行くバッティングは『王イズム』で NG。しっかり振る中でコンタクトすることが要求されるチームです。
そのために用いられているのが『アイピッチ』。小久保監督が2軍監督だった2023年シーズンに2軍に導入され、その後は1軍にも導入。
2024年シーズン中に『トラジェクトアーク』を導入したことが読売新聞によって紹介されています。
アイピッチをしのぐ高性能マシンを導入する動きもある。大リーグで普及し、ドジャースの大谷も活用している「トラジェクトアーク」を巨人やソフトバンク、楽天が導入している。
つまり、ホークスには「阪神投手陣の『速くて強いストレート』を打ち返すための対策を立てるために必要となる土壌は存在していた」のです。
この点を見落とした評価をしてはならないでしょう。
“右のエース” は『速くて強いストレート』が代名詞の阪神投手陣
ソフトバンク打線が「阪神投手陣のストレート」を割り切って狙えたのは “阪神投手陣の右のエース” は『速くて強いストレート』が代名詞だったからです。
日本シリーズで先発登板が予想された村上、才木、デュプランティエ。ブルペン陣の大黒柱である石井大智。どの投手も『速くて強いストレート』が持ち味です。
だから、ホークスは「トラジェクトアークを使った『ストレート対策』に賭けた」のでしょう。ストレートを打てないと昨年(2024年)の二の舞になることは不可避だったからです。
“シリーズを通して打てた” のはスペシャルな選手だけという現実
ここで注意しなければならないのは “日本シリーズ全体を通して打っていた真の実力者” と “出会い頭の一撃を打てた選手” が混在していることです。
『ソフトバンクの打撃方針と保有設備』はどの球団も即座に追従できます。
しかし、実際の成績には『それら以外の要素』も影響します。だから、ホークス打線の中心打者 “だけ” が打てたのです。
「スペシャルな選手個人が有する技量」や「打撃コーチの育成・修正能力」で打撃成績に大きな差が生じる訳ですから、これらの要素を軽視してはならないでしょう。
ホークス打線にも「天敵」や「不得意な相手」は存在する
余談となりますが、ホークス打線は完全無欠ではありません。「天敵」や「不得意なタイプ」は存在します。
阪神が2026年の日本シリーズで今年の借りを返そうとするなら、「各投手ごとに “どちらの方向性” でレベルアップを図るか」がターニングポイントになるでしょう。
天敵の筆頭格は齋藤友貴哉。ポストシーズンを含めて過去2年で18試合・18.2イニングを投げて無失点。被安打は5で許した長打は近藤の1本だけと力技で封じ込めています。
また、不得意なタイプの投手は阪神だと髙橋遥人や及川。多彩な球種でストライクカウントが取れる上、150km/h に迫るストレートを投げ込めることが特徴です。ホークスが有原や上沢を先発で起用していることからも推測できるでしょう。
特殊ケースとしては大竹耕太郎も挙げられます。大竹は “タイミングの駆け引きで打者を翻弄すること” が持ち味で「『投球フォーム』と『チェンジアップの球速帯』が豊富」という特徴があります。
どれだけの好投手でも短期決戦で『狙い球を絞った対策』をされると苦しいですし、対策の効果を阻むには「狙い撃ちが非効率になるだけの球種や球速帯の豊富さ」か「力技で圧倒する」のどちらかになるでしょう。
阪神タイガースの首脳陣が “個々の投手” に対してどちらのアプローチを打診するかが重要なポイントになると思います。